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第4回:行動変革の入口はモノサシ合わせ

  新入社員研修から経営幹部研修に至るまで、企業の人事教育担当が外部講師へ研修を依頼する際には、多かれ少なかれその成果の一つとして意識改革をベースとした行動改革への期待があるように私は思っている。

  既存の技術や知識の定着や伝承については内部講師やOJTをベースとして行われる。しかし現状と違った行動を期待しようとすると、そのベースとなる考え方を含めて、新たな刺激、新たな知識を付与し「気づき」を促進することを期待して外部講師を使う。

  しかしながら、私が講師を依頼される際に、打ち合わせで事務局の方に「どんな意識を変え行動変革を起こしてもらいたいのか」と伺うとどうも曖昧模糊としてはっきりしない事が多い。勿論、「どんな行動を望むか」を一つ一つ規定することはナンセンスである。しかしながら、あまりに抽象的な「元気がない」とか「自ら一歩踏み出ない」とかいうことをなんとかしたいという要望は研修で解決しない根深い要因もあり、また個々人の意識だけの問題とは限らない。さらには「元気になった状態」は極めて主観的であり、研修後「どれだけ元気になったのか」ということは客観的には極めて評価しづらい。

  そこで、私はこれら「組織活性化」や「モチベーション」の企業内研修を引き受けた際まず「職場の活性度チェックリスト」をメンバー全員にやってもらうことを提案している。これは、全部で20問を10点満点でつけてもらうものだが、「私の職場では、『品質管理』『完全管理』について常に細心の注意がはらわれている」といった採点しやすい項目から「私の職場ではお互いに働きかけを率直に行い、素早く反応を返している」「メンバー間の意見対立を『葛藤は組織の発展の芽』と思い明るみに出して処理していく」等個々人の捉え方によって採点基準が曖昧な質問まである。ここで見るべき重要な事は、得点の高さ低さもあるがそれ以上にメンバー間のバラツキがあるかどうかである。バラツキがあるということは同じ状況を見てもそれを健全と捉える人もいれば不健全と捉える人もいるということである。一方で、職場の人間関係が健全な状態とは「成果が上がる状態」でなければならないという視点も忘れてはならない。

  そもそも時代に即応した変化対応の入口は現状を「良し」とするか「否」とするかの問題認識が大切であり、ここのモノサシ合わせがないと行動変革と、さらにその先にある進化し続ける組織作りは実現しない。上記のチェックリストの1点は軽微な差としても、3点以上開きがある項目については、研修の中で具体的な職場メンバーの行動や会社の指示等を話し合ってもらい、当社で「本当は何を変えなければならないのか」を考えてもらう討議の入口としている。

  巷のビジネス書では行動変革の処方箋として「問題意識を持つこと」や「コミュニケーションの活性化」が必ず登場する。そして企業では業種に関わらずコミュニケーション能力の欠落が問題とされ、研修メニューには「アクティブリスニング」や「アサーション」等のスキルアップが多用される。しかしながら、その問題意識やスキルを持っていることだけでは意識改革・行動改革の実現にはつながらない。大切な事はそのスキルを使って「何をコミュニケーションしていくか」ではないだろうか。

2010年4月20日 平塚 大輔
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